板金工程徹底解説

1【準備作業】周辺の付属品を取り外す

塗装工程も視野に入れて付属品を取り外す

板金作業に入る前に、最終的に塗装の邪魔になる付属品の取り外しを行います。これが“ばらし”と呼ばれる作業です。フェンダーパネルのダメージであれば、バンパーやフェンダーライナー、ヘッドライトなどを全て外してしまいます。作業をしているうちに関係がない部分まで傷つけることがないようにするためです。ただし、部品がついている状態である程度の位置を把握しながら作業する必要がある場合は、ばらしをせずに先に板金を進める場合もあります。いずれにするかは職人がダメージの状態を見て判断していきます。

バンパー修理はバンパーを取り外して行う

バンパーだけのダメージの場合、原則バンパーは取り外して作業します。車につけたまま、補修作業をしようとするとどうしてもやれることが限られてきてしまい、将来的に何かしらの不具合が出てきてしまうことがあるためです。脱着代の工賃は削減できますが、長く乗るためには丁寧な補修が欠かせません。

2【塗膜を削る】ダメージ部分と周辺の塗膜を剥がす

凹みの周囲を含めて広く鉄をむき出しに

まず修理箇所の塗膜を削り取る作業を行います。シングルアクションサンダーに60番や80番の目の粗いサンドペーパーをセットして、鉄をむき出しにしていきます。折れ曲がって内側に入ってしまっている部分にはフェルトサンダーを使用するなど工夫しながら、わずかな塗料も残さずに落としていきます。最終的にはパテを使用して整えていくのですが、塗膜が残っているとパテがつきません。凹んだ部分だけでなく前後左右、拳一個分ほど大きく塗膜を削っていきます。

3【板金作業】凹みを出し、盛り上がりを叩く

叩きを最小限に抑えて元の形に近づける

凹みを引き出す際には、損傷の状態に応じてさまざまな工具を使用します。凹んだ部分を表側から引っ張り出すのに使用するのがスライディングハンマーです。準備としてまず、塗膜を剥いだ部分にスタッドマチックという溶接機でワッシャーを複数溶接。そこにジグプレートフックという櫛の目のようになったフックをジョイントバーでつなげます。フックにスライディングハンマーをひっかけ、ハンマーの衝撃で引っ張り出していきます。盛り上がった部分を抑えたり、形を整えたりするには裏にドリーという鉄の塊でできた板をあてた状態で、ハンマーを使用します。叩きすぎると鉄はどんどん伸びていき、強度が弱いぺらぺらの状態になってしまいます。この場合は “絞り”という作業で元の厚さに戻す作業を行わなければなりません。いかに少ない叩き回数で元に戻せるかが、職人の腕の見せ所です。

鉄の凹みと伸びは表裏一体

鉄板が凹むときには必ずどこかが伸びてしまっているものです。よって叩きすぎが原因ではなく、損傷の度合いによっては最初から絞りの作業が必要になる場合もあります。スタッドマチックのアタッチメントを変えて鉄に電流を流し、その後急冷することで絞ったり、絞りハンマーという強制的にギザギザを点けられるハンマーを使用したりして、伸びて盛り上がってしまっている部分を落としていきます。これらの作業で可能な限り元の形に近づけていきます。

4【パテ付け】パテで細かい凹凸を埋める

職人の手作業で形を整える

板金でならしきれなかった凹みや歪みはパテを使用して修正していきます。最初に形を作りやすい、固さのあるカーボン素材のバテを使用。乾いたらサンドペーパーの80番手で形を出していきます。カーボン素材のパテは目が粗いので、その後120番、180番、240番と目の細かいパテを順に使用していき、サンドペーパーも目が細かいものに変えていきます。形を作るのは職人の手の感覚。形が出ていなかったり、ラインがずれていたりしないように仕上げるにはベテランの技術が必要です。

“叩き”でどこまで戻せるかが勝負

叩きの工程をおろそかにするとその分、パテの工程で無駄に時間や材料費がかかってしまいます。鉄の部分がある程度きちんと修復できていれば、パテの回数も少なくて済みます。下の鉄がどれだけきれいに叩けているかは、お客様からは見えません。けれども、板金職人にとっては、きれいに鉄が仕上がった仕事はやはり気持ちがよいものです。万が一、同じ場所にまたダメージがあっても鉄の部分がしっかりと修復されていたら、修理もスムーズ。リペア・ペイント金沢の修理には、そんな板金職人の心意気が込められているのです。

板金はまた安全に乗れる車に戻すための作業

ボディー強度も含めてまた安全に乗れる車に戻すのが板金の役割。塗装をしてしまえば見えない縁の下の作業ですが、板金工程をおろそかにしてパテに頼るような修復では、安全性が担保できません。また、表側のダメージが内反骨格にまで及んでいる場合があります。この部分の修理もきちんとしておかないと、いずれ不具合が生じてしまう可能性が。プロの板金職人であれば、表側のダメージを見るだけで、内側の損傷の有無や程度がだいたわかります。見た目だけでなく、本来行われるべき修理がなされているか、損傷部分の詳細についてもきちんと説明を受けるようにしてください。

LINEで送る

Page Top