塗装工程徹底解説

1【下地作業】塗装面の下処理を行う

塗料の付着力を上げるための足付け作業を行う

板金作業を終えた車体の表面は、鉄がむき出しになった状態と、パテで修正されている部分が混在しています。このままでは塗料が均一に付着しないので、あらかじめ表面に処理を行っていきます。まず、塗料が付着しやすいように表面に凹凸をつける足付け作業を行います。均等に凹凸がつくように、ダブルアクションサンダーを使用。サンドペーパーは400番程度のものを用います。

塗装は清掃が行き届いた専用のブースで

塗装の工程は塗装ブースで行われます。有機溶剤を使用するため、外気とは遮断された環境でフィルターを通して吸排気が行われています。塗膜がよく見えるように、側面には蛍光灯をびっしりと設置。また飛び散った塗料がゴミとなり塗装面に付着することがないように、掃除も徹底して行われています。塗装ブース内は温度調節が可能で、工程に応じて適切に温度を変更しながら作業します。

調色したサフェーサーで表面を均一に

足付けが終わったら鉄の部分には錆を防ぎ、付着性をよくするためにプライマーを塗布します。次にパテの面も含めた塗装する面すべてにサフェーサーを吹き付けていきます。サフェーサーを塗ることで塗装面が均質になり、塗料の発色をよくすることができます。サフェーサーには5%程度まで塗料を混ぜることができるので、車体の色に合わせてサフェーサーも調色していきます。たとえば、黒で塗装する場合は色そのものが強いのでサフェーサーの色はそれほど関係してきませんが、黄色や赤の場合はサフェーサーが白くないと、色が再現できません。メーカーがサフェーサーの色を指定している場合もあります。サフェーサーは遠赤外線塗装乾燥機で20~30分乾燥させたあと、痩せがでないようにあえて一晩おき、完全乾燥させます。

サフェーサー塗布面をサンディング

サフェーサーが塗られたあとの面はざらざらしているので、平らになるようにサンディングしていきます。ダブルアクションサンダーを使い、サンドペーパーは500番から600番をセット。メタリックの塗料を使用する場合は、さらに目が細かいペーパーを使用することもありますが、ソリッドの白色の商用車タイプの車であれば400番のものでも問題ありません。プレスラインがある場合は、形を崩さないように手作業で丁寧に行っていきます。

2【調色】調色とテストを繰り返して色を作る

塗料は輸入車用と国産車用で2種類を使い分け

リペア・ペイント金沢では塗料は大きく輸入車用と国産車用で2種類を使い分けています。輸入車用にはアクサルタ(デュポン)の塗料。VOLVO(ボルボ)を含む輸入車の純正塗料のほとんどは、このアクサルタです。乾燥時間が若干長くかかるなど、作業性は落ちますが、輸入車の色を再現するには欠かせない塗料です。国産車用には日本の二大塗料メーカーのひとつ、関西ペイントの塗料を使用しています。国産塗料は国産車の色の再現に向いているのです。

環境にやさしい水性塗料も選択可能

車の塗装に使われているのは一般的に硬化剤やシンナーなどの有機溶剤を含むウレタン塗料ですが、リペア・ペイント金沢では水性塗料も完備。有害物質である揮発性有機化合物(VOC)の排出の抑制につながるほか、引火性がないため作業時の安全性も確保できます。ただし、空気中や塗装面の水分の影響を大きく受けるため、塗装環境には細心の注意を払う必要があります。

調色作業はサンプルパネルで再現性を確認しながら

同じ車種、同じカラーの車でも使用環境や期間によって、車体の色は一台一台異なります。また同じ車でも部位によって色がわずかに異なります。よっていかにして他の塗装面と違和感のない発色を実現するかが、プロの腕の見せ所になります。これは塗料の色だけが揃っていればよいということではありません。たとえば、パール塗装された車はサフェーサーの上に3コートと呼ばれる3段階の塗装が施されています。調色はこのすべてが施された状態を想定して、行われなければいけません。また塗装にはスプレーガンを使用しますが、ガンの種類や吹き付け方によっても色が変わってきます。このため、サンプルパネルを作って実際の塗装と同じ手順を試してから、本番の塗装を開始します。塗装が厚くなる3コートの場合は、塗料に硬化剤を入れて塗料がしっかりと固まるようにします。

AIカラーシステムで新色の調合もスピーディーに

調色は塗料1滴単位で調節していきます。メーカーが新しい色の車を発売した場合は、一から塗料の調合を行うので1日がかりになることも。時間があるときに先んじてこの作業をしておくと、その車種の塗装が発生したときに、素早く対応できます。また、リペア・ペイント金沢では塗膜をカメラで見ることで色の組成を分析してアウトプットしてくれる、AIカラーシステムを完備。細かい調色は手作業になりますが、ゼロから調色を行うよりもはるかに早く調色できる優れものです。

3【マスキング・塗装】スプレーガンで塗料を吹き付ける

車全体をマスキングしてオーバーミストを防止

塗装する部分以外に塗料がつかないようにマスキングテープやマスカー、マスキングフィルを使ってカバーするのがマスキング作業です。塗装面に近接する部分だけをマスキングするケースも見られますが、塗料はミスト状になって拡散するので、離れたところにも付着してしまいます。これがオーバーミスト。一見わかりませんが、手で触るとざらざらして塗料が付着してしまっていることがわかります。このオーバーミストを防ぐために、リペア・ペイント金沢では塗装する部分以外は完全に覆ってしまいます。

スプレーガンは塗料ごとに限定使用

塗装で使用するプレーガンは個人所有。ベテランになればなるほど所有本数が増えていきます。塗料の種類により、使用するスプレーガンはそれぞれ違います。たとえば、アクサルタの塗料は粘度が高いため、高い圧力で噴出するガンを使う必要があります。またメタリックはメタリック専用、ソリッドはソリッド専用、クリヤー(トップコート)はクリヤー専用とガンを分けています。これはどんなに丁寧に洗ってもわずかな塗料が混入してしまい、仕上がりに影響するからです。スプレーガンを使い分けること、綺麗に洗浄することも含めてプロの仕事なのです。

コート、2コートは吹き付けて乾燥、を繰り返す

塗装ブースを20度に設定した状態で、サンプルパネルで確認したやり方で塗装していきます。ガンの選択、吐出量や圧力の調整、ガンの角度や動かし方など、職人の腕が試されます。塗装する場合は、ダメージがあった部分だけでなく、その周辺も併せて行う場合があります。塗装したときに他の部分と違和感がなくても、年数を経るにしたがって差が出てきてしまう可能性があるからです。ぶつけた部分だけが新車の輝きにならないようにするために必要な作業です。2コート、3コートの場合はそれぞれで乾燥を待ちながら次の工程に進みます。

クリヤーを塗布して高温で焼き付ける

塗装の最後はクリヤー(トップコート)です。一度も塗料を使用していないクリヤー専用のガンを使用します。輸入車用のものはとろっと、軽自動車用はさらさらしているなどクリヤーにも複数の種類があり、使用するガンの種類や塗布の回数が異なります。クリヤー塗装が終わったらブース内の温度を70℃に上げて30分程度、高温で焼き付けを行います。

4【仕上げ磨き】コンパウンドとポリッシャーで仕上げる

磨き跡が残らないようにダブルアクションを使用

クリヤーが完全に乾燥したら、磨きの工程に移ります。ウールバフに仕上げ用のコンパウンドをつけ、ダブルアクションポリッシャーで磨いていきます。あえてダブルアクションを使うのは、磨き跡がわずかでも見えないようにするためです。塗装の工程がしっかりと仕上がっていれば、磨きの工程にはそれほど時間はかかりません。削った粉が入らないように、ウィンドウのゴムの部分やワイパー周りの部分は丁寧にマスクキングをしてから行います。

塗装する面の下処理が色の再現性と耐久性を左右する

長くきれいな状態を保つためには塗装前の下処理が重要です。値段だけで選ぶと、仕上がった時は同じでも、1年後2年後に色が変わってしまうことも。作業内容に自信のある会社ならいつでも途中経過を公開してくれるはずです。私たちも作業の経過を逐一、写真つきでお客様にご報告しています。見えない部分だからこそ、信頼できる会社を選びたいものです。

LINEで送る

Page Top